人でも、体脂肪が増加すると食欲が低下します。たとえば、健康な男性の被験者に一日当たり1000キロカロリー分の過食をさせ、体重増加と食欲の変化を調べた研究があります。
これを21日間続けたところ、一日平均の体脂肪の増加は80グラムほどでした。過食の期間の後、被験者に自由に摂食させました。その時のカロリー摂取量は、通常よりも平均で一日当たり476キロカロリー少なくなったといいます。
21日間の過食の結果、増加した体重は、1~2キログラムにしかすぎないのです。その間の体重増加にともなってみられたエネルギー摂取の減少は、500キロカロリー近くにもなります。
この食欲抑制は、動物実験の結果から予想される逆相関曲線以上に大きな値です。さらに興味深いことに、摂取カロリーの減少分は、被験者がとりわけ脂肪の摂取を避けたことによります。
このダイエット実験のように、ラット、サル、ヒトのいずれでも、体重や体脂肪が増加すると食欲が減退することが観察されています。この食欲減退は、脂肪組織と非脂肪組織の割合がもとに戻るまで続きます。
体脂肪の増減が食欲と逆相関しており、その傾向は、消化管を介して過食させた場合も、高カロリー輸液により過剰カロリーを投与した場合も同様です。
したがって、体脂肪の増減に関連して、食欲を調節するシグナルは、胃消化管からではなく、増加した体脂肪から発せられているとダイエット実験から考えられるそうです。